呉服販売業を営む家に生まれ、学生時代は弓道に取り組むなど、日本の伝統が常に身近にある環境で育った酒井原さん。父親には「相手を思いやる心を常に忘れるな」と、よく諭されたとか。着付けや日本の礼儀作法、公式の場における世界共通の振る舞い「プロトコール」などについても独自に勉強していましたが、「日本の礼儀作法や伝統文化を大切にしたい」との思いを強くしたのは、いくつかの出来事がきっかけでした。

 一つ目が東日本大震災。被災した方の中に、着物の仕事を通した知り合いが多くいました。ボランティアで、仮設住宅などで不自由な暮らしを強いられている人々に米を届けたときのこと。厳しい状況の中でも笑顔で感謝を述べられる方々の姿に、日本人としての「礼」と「儀」を学び、感動しました。それらは着物によって生まれたご縁でもあり、「いつかまた、着物を着られる自分でありたい」と話される姿に「文化を継承する使命感のようなものも感じた」といいます。

 2014年には、知人の紹介で、マレーシアで開かれたパーティーに出席しました。アジアを中心とした世界各地から1千人以上が集まる場でした。米沢の絹織物は「米織」の名で知られる名産品でもあり、米織を世界に売り込もうと、米織の着物を着て出席。華やかで上品な雰囲気に、世界各地の人から声が掛かりました。「着るだけで場が華やぎ、和やかな雰囲気を演出する」和服の力を再認識することにもなりました。

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